八溝杉の家

家族の距離が縮まるオープンな家

東京の喧噪を抜け出し、家族で田舎に移り住む
那須地方の地元杉を使った家づくり

那須地方の地元杉の家

クライアントは、それまで住んでいた東京を離れて那須地方に住まいをつくりたいという6人家族。
住まいには素材からこだわって、地元杉である「八溝杉(やみぞすぎ)」を使用したいとのことでした。
まずは丁寧なヒアリングで要望を詳しく聞きました。

クライアントの要望

那須地方は寒冷地のため、クライアントからの要望は「冬暖かい家にしたい」というものがメインになっていました。
この要望に応えるための工夫を中心に置きつつも、まずはすべての要望を聞き出してコンセプトづくりに役立てます。

  • ・冬暖かい家にしたい。(夏は冷房はいらない)
  • ・木造で「木の空間」の良さを引き出した住宅にしたい
  • ・地元の「八溝杉(やみぞすぎ)」を使いたい
  • ・「現代的な民家(古いスタイルではないもの)」のような家にしたい
  • ・自然素材にこだわりたい(「木」と「和紙」と「左官」の空間がいい)
  • ・キッチンを家族が集まる中心的な位置づけにしたい
  • ・キッチンに面して囲炉裏のある「茶の間(居間)」が欲しい
  • ・土間の空間をつくりたい
  • ・できるだけ光熱費がかからない家にしたい
  • ・お風呂は家族みんなで入れる広さがあり、景色が眺められる空間にしたい
  • ・荷物が多いので収納を多くとって欲しい
  • ・玄関横にシューズクロークが欲しい
  • ・書斎(個室ではなく開放的なもの)が欲しい
  • ・できれば「書斎~土間~茶の間~キッチン~寝室」の全てにつながりのある空間にしたい
  • ・子供部屋には当分間仕切りは必要ないのでオープンにして欲しい etc……

木造で「木の空間」

「現代的な民家(古いスタイルではないもの)」のような家

光熱費がかからない家

家族

米村からの提案

上記の要望を精査して、今回の家づくりの中心となるコンセプトを提案しました。

コンセプト1.「八溝杉」を使った現代的民家づくりにする
コンセプト2.空間の素材は「木」と「和紙」と「左官」を基本にする
コンセプト3.家族が集まる核に「キッチン」と「茶の間」を設置する
コンセプト4.「土間」の空間を設ける

「八溝杉」を使った現代的民家づくり

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プランニング1

オープンな空間をつくるために

土間・茶の間・キッチン・書斎・寝室をつなげることで、家全体がひとつの部屋であるかのように感じられるオープンな空間を実現。また、特に子供部屋に関しては部屋の個室化を避けました。さらに、吹抜けを設けることで「横の空間」だけでなく1階と2階という「縦の空間」にもつながりを持たせました。

オープンな空間をつくる

プランニング2

冬暖かく、光熱費がかからない家

外の気温に影響されず、室内の熱を逃がさないように、外断熱のほか高気密・高断熱・高蓄熱の住宅を設計。さらに、深夜電力を利用したオール電化住宅(一部石油も利用)にすることで、光熱費の大幅な削減をご提案しました。

冬暖かく、光熱費がかからない家

建築中のアクシデントと解決策

建設予定地の地盤が悪く、杭工事(柱状改良)を行うことになりました。また、崖地に家を建てるのは設計および工事が難しく、対応できる工務店が少ないことも問題のひとつ。融資の審査が難航し、銀行からの融資が受けられずに、工事が止まってしまったこともありました。

崖地の家

杭工事(柱状改良)

杭工事(柱状改良)2

杭工事(柱状改良)3

連携が成功につながる

崖地の建築は難易度が高く、通常の工務店では対応できないことが多々あります。しかし、今回は現場監督が非常に勉強熱心で、僕や構造担当設計事務所からの要求に全力で応えてくれました。また寒冷地の仕様・高気密高断熱仕様・オール電化仕様については、反対に僕が教わる事も多かったです。この連携ができるかどうかが、家づくりの成功には欠かせません。銀行からの融資に関しては、融資方法を変更するといったかたちで対応することになりました。

チーム連携が家づくりの成功への近道

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チームでの家づくり

通常、材木の指定までするクライアントはいない……
この要望には、しっかり応えようと思いました

普通は、クライアントから材木まで指定されることはありません。しかし、今回は「地元の八溝杉を使いたい」というクライアントの強い意志がありました。実際、地元の木を使ったほうが、その地方の気候に合った家ができます。僕は地元の材木である八溝杉を使うために、材木屋と工務店を探すことからはじめました。

那須での家づくり

林業の方々と直接やりとりをしてわかったのは、「日本の杉は決して高くない」ということです。市場に出ると流通の問題で高額になりますが、直接仕入れることができれば輸入の木材を使うのとそれほど大きな差はありませんでした。この際に縁があって出会った材木屋と工務店とは、「八溝杉を使う」という点で意気投合し、いいチームが作れました。クライアントをはじめ、さまざまな専門業者と協力してひとつの「作品」をつくるというのはいいものです。

クライアントからのメッセージ

もともと一家で千葉県松戸市に住んでいましたが、自分自身が田舎で育った経験から「子供も田舎でのびのびと生活させたい」という夢がありました。最初は千葉県で土地を探していましたが、土地代の高さと子供の生活環境を考えた際、自分の価値観が変わりはじめました。たまたま見た新聞の広告で那須の別荘地が土地代は坪あたり1万5千円、100坪で150万円です。しかも温泉付き! そこで、今回の今回の那須での家づくりに方向転換しました。

旧知の米村さんに依頼し提案してもらいながら家をつくりあげていくうちに、自分自身も家をつくるプロセスにのめり込みました。建築はプロに進めてもらいながら、自分でも何かつくりたいと思えるようになったんです。そこで、子供部屋のベッドや机は私がつくりました。新しい趣味、というよりは、ライフスタイルが変わったという感じですね。

ニワトリや犬も飼い始めて、今は子供たちも田舎での生活を満喫しています。ありがとうございました!